卒業のドラマ

卒業式もドラマなのだ。
不思議なもので、卒業式は幼さが残る顔がいくらかおとなびた
表情に見えてしまうのだ。

子どもが大きくなっているので、卒業式には何度か出ている。
その中で忘れられない卒業式があった。


ぱーまん2号(二男)の高校の卒業式。
2号は出身中学からひとりだったし、目立つタイプではなかった。

必然的に親の知り合いも少ない。
肺炎で入院し、退院したばかりだったから電車に乗るのもシンドイな。
何時頃までかかるんだろう?くらいの気持ちで出席していた。


卒業生の名前を呼び、代表が卒業証書を受け取る。
どこも、その後は祝辞や校歌の合唱などだろう。

その後だった。

半年前に火事で焼死した生徒がいた。
先生が、ここで一緒に卒業する予定だった生徒にも
卒業証書を授与したいと職員会議で決めたことをその場で報告して
その親御さんを紹介してくれたのだ。
子どもを亡くした親御さんの気持ちは癒えることがないと
いうが、卒業証書によって、少しは親御さんの気持ちが
楽になれたのじゃないかなと感心していた。

「それから、もうひとつ。皆さんにぜひ一緒に祝って
欲しい人がいます」

目標を持って入学した子が、その年に発病してしまったらしい。
何ヶ月間か寝たきりになって、必死のリハビリで車椅子に座れる
ようになったと言う。

そこで、お母さんは高校だけは卒業させてやりたいと考えた。
その学校はバリアフリーの校舎ではない。
でも、お母さんはあきらめさせたくなかった。
「わたしが毎日、車椅子と一緒に登校します。
だから、卒業できるように考慮してほしい」と訴えたそう。

学校がそれを受け入れてくれたおかげで
お母さんは息子さんと毎日登校を共にし、
手が不自由なときはノートも代わりにとっていたとか。

「きょうのこの日がお母さんの本当の卒業式です。
長い間、本当によく頑張りました。ありがとうございました」
と締めくくられた。

口で言うのは簡単だけど、
心労を思うと、どんなにかたいへんだったことだろう。

そのお母さんは言ってた。
体がこうなってしまったからには、子どもがあこがれている
仕事に着くことはできないかもしれない。
だからこそ、自分が選んだ高校だけは是が非でも卒業させたい。
それが、わたしの希望だったのだと。

このときばかりは、これまで名前も顔も知らなかったお母さんに
力いっぱいの拍手を送っていました。
そして、その生徒は友人に見守られながら松葉杖で退場していった。

卒業式って、どの家庭にとってもドラマがあるんだな。

先日、知人のお通夜に行ってきた。
前日に何となく気分が悪いと言いつつ、
翌朝、病院に行くつもりだったらしい。
ところが、朝になったら、冷たくなっていたという。

末っ子が娘と中学まで同級生でもあり、そのお姉さんは部活の
先輩でもあったから、ときどき出会ったりすると、
子どものことを話たりすることはあった。

子どもたちが大きくなってきたとはいえ、まだまだ
家庭の中ではお母さんという人の立場は重要だろう。

あまりにも突然のことで打ちひしがれている様子にかける
言葉が見つからなかった。

お姉ちゃんは成人式を終えたばかりで、
末っ子はあと10日もすれば卒業式だった。

息子の成長した晴れ姿を見せてあげたかったな。


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